減税案『決断の机』へ…トランプ、大統領権力さらに強くなる

議会を通過した減税案、5日署名

トランプ、共和党内での影響力を誇示

一部の懸念にもかかわらず減税案を押し通す

債務上限引き上げなど政権運営に拍車がかかる見通し

IRA縮小など『バイデンの色を消す』加速

一方的な法案可決、逆風も予想される

韓国、半導体は恩恵・電気自動車は打撃

ドナルド・トランプ米大統領の二期目構想をまとめた『One Big Beautiful Bill（OBBBA）』が、上院に続き3日（現地時間）に下院も通過し、議会のハードルを越えた。大規模な減税と福祉支出削減を含むこの法案には、多くの共和党議員が反対や懸念の声を上げたが、最終的に成立してトランプ大統領の政権運営に弾みがついた。

◇ 政権構想に『翼』

米下院はこの日、賛成218票、反対214票でトランプ減税案を可決した。先立つ上院でも賛成51票、反対50票で可決されている。下院可決の瞬間、議事堂では「USA! USA!」の歓声と拍手が湧き上がった。米メディアは「トランプの大きな勝利」と評価。トランプ大統領は当初の計画通り、アメリカ独立記念日の4日午後5時にホワイトハウスで署名式を行う予定だ。

今回の法案成立により、トランプ大統領は残り3年半の任期中に選挙公約の核心政策を推進できることになった。法案には、2017年のトランプ一期目で成立した「Tax Cuts and Jobs Act（TCJA）」の失効期限を恒久的に撤廃する内容が盛り込まれている。個人所得税・法人税の引き下げ、チップや残業手当に対する非課税措置も含まれる。

歳入の減少を補うため、Medicaid（低所得者向け健康保険）とインフレ抑制法（IRA）の恩恵は大幅に縮小された。前大統領ジョー・バイデンの痕跡を消したいトランプ大統領の意向が反映された形だ。迅速な法案通過のための「予算調整手続き」から社会保障給付を除外するのは規則違反との指摘もあったが、共和党は「詐欺防止」の名目で大統領の主張を貫いた。

特に『見えざる勝利』は、債務上限を5兆ドル引き上げた点だ。米政府は現在、36兆1000億ドル規模の債務上限をギリギリまで使い切っている。このままでは8〜10月中に連邦政府のシャットダウン（業務停止）に追い込まれる懸念もあったが、債務上限が拡大され、トランプ大統領は民主党と交渉する必要がなくなった。

民主党は無力だった。ハキーム・ジェフリーズ下院民主党院内総務が、院内総務に慣例的に与えられる権限を使い、8時間44分に及ぶスピーチ（従来記録は8時間32分）という新記録を達成し、採決を一時的に遅らせただけだった。

◇「中間選挙に負ける」との警告も

任期序盤の勢いがやや落ちていたとの評価の中で減税案可決を成し遂げ、トランプ大統領の党握力の大きさが示された。終始一貫して「自分のやり方で押し通す」戦略をとり、最終的に成功した。

昨年大統領選直後から、共和党内では法案を二つに分けて予算調整手続きを二度使うべきだとの意見もあったが、トランプ大統領は「一つでやれ」と指示。また、党内でMedicaid削減水準をめぐる論争が始まると「手を付けるな」と怒りをあらわにした。下院にはメモリアルデー（5月26日）前まで、議会全体としては7月4日独立記念日前まで通過させるようタイムテーブルを示し、目標を達成した。

だが、トランプ大統領と熱烈な支持者中心にまとめられた法案が十分な検討・議論・修正なく一方的に通過したことが、結局共和党の足かせになるとの批判も多い。共和党のトム・ティリス上院議員（ノースカロライナ州）は先月28日、トランプ大統領との電話の中で「間違っている」と指摘。Medicaid削減で下院の多数党の地位を失うことになると警告したとワシントン・ポストは伝えている。

財政赤字を減らすと主張してきたトランプ大統領だが、可決された法案通りに進めば今後10年間で連邦財政赤字が3兆3000億ドル増加するとの米議会予算局の試算も出ている。債務削減を強調しながら債務上限を引き上げたのも矛盾しているとの批判もある。

韓国企業にも大きな影響がある。半導体企業への税額控除比率が25%から35%に拡大された点は好材料だ。しかし電気自動車バッテリーや風力、太陽光関連の税控除優遇措置が早期に終了、または縮小されるため、米国に投資する韓国関連企業の打撃が予想される。

ワシントン＝イ・サンウン特派員 selee@hankyung.com